今日は女性の片頭痛のお話です。
女性は男性の約2〜3倍の片頭痛有病率で、生涯有病率は43%に上ります。
①初潮期、性成熟期
性成熟期は片頭痛の頻度が高く、月経時片頭痛が特に問題になります。
月経時片頭痛は初潮前後に頻発し、女性の約60%が月経と片頭痛との関連を訴えています。
以前も書きましたが、月経時片頭痛は重篤かつ治療抵抗性で、
吐き気・嘔吐や光/音過敏といった症状を伴いやすいのが特徴です。
また1回の頭痛の持続時間が長く、再発も多いです。
月経時片頭痛は重症度が高いので、痛み止めの第一選択はトリプタンです。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は単独投与では効果不十分なケースが多いですが、
ポンタール®(メフェナム酸)の8時間間隔投与や
イミグラン®(スマトリプタン)+ナイキサン®(ナプロキセン)併用が有用とされています。
予防療法についてはトピナ®(トピラマート)が頭痛頻度を抑制した報告があります。
個人差はありますが、CGRP関連抗体薬が有効な人もいます。
それ以外には短期予防療法やホルモン療法が選択肢になります。
→月経時片頭痛について
②妊娠・授乳期
女性片頭痛患者の19.9%が片頭痛のため妊娠を避けるという報告があります。
一方で、前兆のない片頭痛を持つ女性患者の60〜90%で妊娠中の頭痛が改善し、
前兆のある患者では改善傾向が乏しいことなども報告されています。
分娩後は早期に片頭痛が再発し、母乳栄養は再発に抑える作用があることも知られています。
妊娠・授乳期の片頭痛管理は基本的には非薬物療法です。
しっかり睡眠をとり、規則正しく食事・水分を摂取し、運動をする。
これだけでうまくいかない場合にはリスクとベネフィットを天秤にかけて、
薬物療法を考えます。
薬物療法をするとしても基本は最小量かつ最短期間で行います。
痛み止めについてはカロナール®(アセトアミノフェン)が第一選択です。
トリプタンも使用可能です。
イブプロフェンはリスクの観点から妊娠中期のみの使用が望ましいです。
予防療法はインデラル®(プロプラノロール)が第一選択です。
授乳期は痛み止めはカロナール®(アセトアミノフェン)やイブプロフェンが使用可能です。
トリプタンを使うならレルパックス®(エレトリプタン)、イミグラン®(スマトリプタン)は
母乳移行が少なく安全性が高いです。
予防療法はインデラル®(プロプラノロール)、トリプタノール®(アミトリプチリン)、
ワソラン®(ベラパミル)は安全に使用可能です。
セレニカ®/デパケン®(バルプロ酸)も母乳移行が非常に少ないことから
授乳期でも使用可能です。
CGRP抗体薬は胎児や新生児に対する影響が不明で、
胎盤や授乳を通じて児に移行することから、妊娠・授乳期の投与は推奨されていません。
体にとどまる期間が長いため、妊娠予定のおよそ5カ月前には投与を中止する必要があります。
③更年期
更年期の片頭痛の有病率は10~29%です。
更年期で見られるホルモンの不安定な変動が片頭痛の頻度や重症度に影響を与えます。
予防療法としては一般的な予防療法または短期予防療法、ホルモン補充療法が選択肢になります。
ホルモン含有子宮内避妊具あるいは経皮製剤によるホルモン持続投与が望ましく、
これらの非経口ホルモン療法は前兆のある片頭痛患者にも使用が可能です。
④閉経後
閉経後は片頭痛は改善することが多いです。
女性はライフステージ毎に頭痛の特徴が変化し、それに合わせた治療も必要になります。
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